三浦菓子店 店主のお菓子作りの理念
こんにちは、愛媛の松山 北条にある三浦菓子店の店主 三浦哲也です。このページをご覧いただきありがとうございます。まだ私のことを知らない方も多いと思いますので、このページでは私のお菓子作りに対する想いとこれまでの歩みをお話しさせてください。
技術と想いが紡ぐ、店主三浦のお菓子作りの軌跡
私は高校を卒業してお菓子の専門学校に入り、お菓子作りの道を歩み始めました。そして専門学校卒業後、神奈川県平塚市「シルスマリア」での修行をはじめ、2005年には神奈川県洋菓子作品展、コンフィズリー&クッキーのコンフィズリー部門にて神奈川県洋菓子協会会長賞(1位)を受賞しました。
その後、三重県のフレンチレストランでのパティシエ経験や、ハワイの洋菓子店の立ち上げに携わるなど、国内外で幅広い経験を積んできました。
その後、さらなる高みを目指して単身でフランスに渡り、パティスリーフランソワで修業をし マカロン発祥の地ならではの繊細な技術と哲学を学び、日本帰国後はラデュレ銀座や「マカロンエショコラ」の工房運営に携わり、生産ラインの構築や商品開発を通じて高い技術力を習得し、日々美味しいお菓子を作るために腕を磨き続けてきました。
2019年、愛媛県松山市北条地区に念願の三浦菓子店をオープンし、地元の柑橘や栗を活かした無添加スイーツを提供している。「お菓子を通じて笑顔をつなぐ」ことを信念に、日常を彩る特別な一品を届け続けています。
お菓子には焼き菓子、和菓子、生菓子など、さまざまな種類があります。それぞれが独自の魅力を持ち、作るためには奥深い技術と知識が必要です。その中でもマカロンは特に繊細で、一粒に込める味わいや食感の調和、美しさへのこだわりは他のお菓子とは一線を画します。お菓子作りの原点でもあり、私の技術と想いを最も体現できるお菓子がマカロンなのです。
パリのラデュレで【マカロン】との出会い—人生を変えた瞬間
私が初めてマカロンを知ったのは、お菓子の専門学校に在学中のフランスの研修旅行でのことでした。
その旅の中でマカロン発祥の店と言われる名店、ラデュレを訪れる機会がありました。パリの街並みを背景にしたラデュレの店舗は、外観からしてすでに芸術的で、洗練された雰囲気が漂っていました。そして店内に入った瞬間、目の前に広がる色鮮やかなマカロンのディスプレイに釘付けになりました。
整然と並べられたマカロンは、一粒一粒が宝石のように輝き、まるで特別な魔法がかけられているかのように美しかったのです。その存在感に圧倒されながら、私は一つのマカロンを選び、手に取りました。薄いサクッとした外側が心地よく崩れ、中はしっとりと滑らか。噛むたびに香り高い風味と繊細な甘さが広がり、まるで夢の中にいるような気分でした。「お菓子がこんなにも人の心を動かせるのか」と初めて知り、心が大きく揺さぶられた瞬間でした。
その体験は私の価値観を一変させました。それまで私は、日本で親しまれるお菓子作りを学んでいましたが、「自分の手でこんな特別なお菓子を作り出したい」という新たな目標が芽生えたのです。それは単なる憧れではなく、未来の自分が進むべき道として明確なビジョンに変わりました。この時から、マカロンは単なるお菓子ではなく、私の人生を形作る象徴的な存在となりました。
その後も私は、マカロンに魅了され続けましたが、ラデュレでの体験は特に大きな原動力となり、スイーツ作りへの情熱をさらに強くしてくれました。研修旅行という短い時間でしたが、この出会いがなければ、今の私や三浦菓子店は存在しなかったかもしれません。
専門学校卒業からフランス修行までの道
そんなフランスでの研修旅行の衝撃が残ったまま専門学校を卒業した私は、まずは日本国内で基礎を固めることを目標に、神奈川県平塚市にある生チョコ発祥の店「シルスマリア」で修行を始めました。ここでは焼き菓子や生菓子を中心に、スイーツ作りの基本を徹底的に学びました。特に、「素材を最大限に活かす」という店の理念に触れたことで、丁寧な仕事が美味しさにつながるという信念を身につけました。
その後、三重県にあるフレンチレストランのパティシエとして働く機会を得て、レストランならではのデザートプレートの繊細さや、料理とスイーツの調和を学びました。この経験は、自分が目指すお菓子作りの幅を広げる重要なステップとなりました。そしてさらに、ハワイ・ホノルルでのフランス菓子店の立ち上げに関わることで、異国の地で新しい環境に挑戦する経験を積みました。現地では、日本と海外のスイーツ文化の違いを肌で感じ、国際的な視点を得ることができました。
帰国後は、自分の道を模索しながら、さまざまな仕事に挑戦しました。チョコレート専門店で販売を担当したり、バリスタとして飲み物とのペアリングを研究したりと、多岐にわたる活動を経験しました。しかし、お菓子への情熱だけは決して揺らぐことなく、自分の進むべき方向を探し続けていました。
そんな中で大きな転機となったのが、フランスのマカロン発祥と言われる名店ラデュレでの勤務経験のあるシェフとの出会いでした。そのシェフは、本場フランスで培った高い技術を持ち、マカロン製造を専門としていました。彼の指導のもと、私もマカロン製造を任されるようになり、マカロン作りの繊細さと奥深さを改めて実感しました。それまでにもマカロンに魅了されていましたが、シェフの技術を目の当たりにしたことで、「自分も本場で学びたい」という思いが一層強まりました。
そして、その思いを胸に、フランスでの修行を決意しました。すぐに準備を始め、現地のスイーツ文化や技術を学ぶための環境を探し、本場フランスでの挑戦に向けて一歩を踏み出しました。このようにして、専門学校卒業からフランスでの修行に至るまでの道のりは、多くの経験と出会いを重ねる中で築かれていったのです。
フランス修行—パティスリーフランソワでの挑戦と学び
フランスへの渡航を決意した私は、ボルドーから東へ75キロのベルジュラックにあるルレ・デセール加盟店「Patisserie Chocolatier Francois」(パティスリーフランソワ)で修行を始めました。この店舗は、日本人がいない環境で自分を試したいという思いから選びました。
最初の3か月間は、フランス語がほとんど話せず、洗い物や雑務をこなす日々でした。自分の技術を発揮できないもどかしさを感じつつも、積極的にフランス語で同僚に話しかけることで、次第に信頼を得るようになりました。そうして少しずつ菓子作りの工程にも携わらせてもらえるようになり、フランス菓子の基礎を学ぶ貴重な時間となりました。
休みの日には、近くの街やパリを訪れて食べ歩きをし、スイーツ文化を研究しました。一流のパティスリーに行ったり、片道4時間電車に乗って地方の小さな菓子店を巡り、ただ味わうだけでなく「なぜ美味しいのか」「どのように作られているのか」を考え、細かな味の違いや技術を分析しました。特に地方の店で出会ったシンプルながらも素材を活かした焼き菓子は、「本当に良いお菓子とは何か」を改めて考えるきっかけを与えてくれました。
その後、 パティスリーフランソワで本格的な修行が始まり、特にマカロン作りの繊細さを学びました。焼き加減やクリームの温度管理など、一つひとつの要素に妥協が許されない環境で、何度も失敗を重ねましたが、そのたびにフランスの熟練の職人たちの高度な技術と仕事ぶりから多くを吸収しました。
フランソワでの基礎から高度な技術習得、そして食べ歩きを通じた研究。この全ての経験が、今現在の私のスイーツ作りに深い影響を与えています。
フランスから帰国とキャリア、そして愛媛への移住の決意
フランスでの濃い修行を終え、多くの技術と哲学を胸に日本に帰国した私は、ご縁があって日本のラデュレ銀座で働けることになりました。学生時代にラデュレに訪れてから10年後のことでした。
銀座店では主に喫茶や販売の現場を担当。
日本のお客様に届ける現場に立ち高品質なスイーツを提供する現場を目の当たりにし、日本市場特有のニーズに応えるために必要な製造プロセスや品質管理を自分の今後の店舗づくりに取り入れることができました。
その後、自分のスキルをさらに発揮する場として、マカロンとショコラを専門とする「マカロンエショコラ」の工房運営に関わりました。ここでは、一人で生産ラインを構築し、効率化と品質向上を両立する仕組みを作り上げました。
試行錯誤を繰り返しながら、運営を軌道に乗せることに成功し、安定した生産体制を確立することに成功。この経験を通じて、単なる製造技術だけでなく、運営管理や生産計画の重要性も深く学びました。
しかしちょうどそのタイミングで、子どもが生まれたことで、私の人生観は大きく変わりました。
それまでスイーツ作り一筋で働いてきた私は、家族と過ごす時間の尊さに気づいたのです。「子どもがのびのびと育つ環境で、家族と共に理想のお菓子作りをしたい」。そう考えるようになったときに出会ったのが、家族旅行で訪れた愛媛県松山市の北条地区でした。
この土地は、瀬戸内海の穏やかな風土と自然豊かな恵みに満ちていました。特に地元で採れる柑橘や栗といった素材は、私がフランスで学んだ「素材を活かすお菓子作り」の哲学とぴったり重なり、心を動かされました。また、地域の方々の温かさに触れ、「この地に根ざしたお店を作りたい」という想いが一層強まりました。
そして、クラウドファンディングを通じて多くの方に応援していただき、2019年2月に愛媛県松山市の北条地区にて念願の三浦菓子店をオープンすることができました。
特別な日も、日常も。お菓子で笑顔の架け橋に。
三浦菓子店は、「地元の皆さまに喜んでもらえる安心安全で美味しいお菓子を作りたい」という想いからスタートしました。子どもからお年寄りまで、どなたでも安心して楽しめる、笑顔あふれるお菓子をお届けしたい。そして、特別な日にはもちろん、何気ない日常にも寄り添い、「お菓子を通じて笑顔をつなぐ場所」でありたいと願っています。
地元愛媛の素材を使い、無添加で安心・安全な味を追求しています。一つひとつ心を込めて少しずつ丁寧に作り上げたお菓子が、地域の皆さんに愛される存在になれるよう努めています。これからも、皆さまの笑顔を支えるお菓子を作り続けます。今後とも三浦菓子店をよろしくお願いいたします。